【マルヨシ通信No.86】
2023年10月1日よりインボイス制度が始まるという話は何となく聞かれた方も多いと思います。ここでは不動産オーナー様に関係するインボイス制度のご紹介を行います。
輸出入をやる訳でもないのに「インボイス」などと横文字を使って、政府が新しい制度を施行しようとするのも何となく怪しいですね。怪しいと思われた方はイイ勘をしています。インボイス制度とは消費税のルール変更を伴うものです。
消費税は先の参院選でもコロナ禍で景気が悪いから10%を5%に下げろなど選挙の争点にもなっていました。政治家や政府にとって消費税は非常にデリケートで避けて通りたい鬼門だったようです。「消費税のルール改訂」と言わずに、インボイス制度と称したのはそうした背景があったようです。
結論を先に言いますと個人向け賃貸住宅を貸しているオーナー様にとりましては、今回の消費税のルール改訂はあまり影響がございません。
店舗、事務所、駐車場を貸しているオーナー様の場合は影響がございます。オーナー様の消費税課税対象売上になるモノと非課税売上で良いモノを下記の表で分類してみました。
右側の非課税扱いであれば、そもそも消費税を徴収していない訳ですから、免税事業者のままで良いと思います。左側の課税対象でも利用者がオーナー様に対し、この後述べます適格請求書を求めなければ免税事業者のままで構いません。
2023年10月1日よりインボイス制度が施行されると国が認めた請求書(=適格請求書)を発行しないとその商品やサービスを仕入れる事業者は、消費税の計算上経費認定して貰えなくなります。今回のインボイス制度を正しくご理解頂く為に、現在の消費税の仕組みを簡単に説明しておきます。
一人親方は益税として30万円を手に入れる
上図をご覧下さい。今まで課税売上が1000万円以下の中小事業者は「免税事業者」に区分けされ消費税の申告をしなくても良いという恩典を得ておりました。
この図の一人親方は個人事業主であり免税事業者です。300万円の仕事をして消費税30万円を加え合計330万円を工務店に請求し、330万円の支払いを得ました。
結果として30万円の消費税は一人親方の利益になりました。いわゆる国も認めている「益税」です。何となく弱者救済の様な意味合いで税の公平性から逸脱しています。
「客からは税金として預かるが納税せずに自分のポケットに入れて良い」というのが益税です。税名目で徴収して納税しなくて良い税は海外にも類似の例はありません。益税を失くすのは長年にわたる財務省官僚の悲願だったという人もいるくらいです。
今回の改訂はこの一人親方にも課税事業者になって貰い、きちんと30万円の消費税を払って貰おうとするものです。その為に考え出されたのが適格請求書(=インボイスと称します)です。インボイスには必ず課税事業者(適格請求書発行事業者)として登録番号を入れなければなりません(後述)。
取引図の中央に位置している工務店は消費税60万円を足して合計660万円の請求書を建設会社に送り、同額の支払いを受けます。
消費税だけの計算で言うと工務店は60万円の消費税を建設会社から貰い、30万円を一人親方に払い、差額30万円を税務署に納付します。従来はこの方法で問題ありませんでした。
然し、2023年10月1日に国税庁はインボイス制度をスタートさせます。その為に一人親方は適格請求書発行事業者の登録申請を2023年3月31日までに終えなければなりません。同事業者の登録をしなければ登録番号を適格請求書に記載することが出来ません。
中央に位置している工務店は適格請求書を一人親方から貰えなければ30万円の消費税控除は出来ず、自社で30万円を負担しなければなりません。結果として適格請求書発行事業者登録をしない一人親方には仕事が来なくなる可能性があります。一人親方が仕事を貰える対象は適格請求書を必要としない一般個人だけに限られてしまいます。
上記はインボイスのサンプルです。(出典 国税庁HPより)
右上の適格請求書発行事業者の登録番号➀がないと、この請求書に基づいて支払を行う事業者(=発注者)は消費税の経費認定をして貰えません。今後は登録した事業者だけを使おうという話になってしまいます。
最後に簡易課税制度について触れておきます。消費税の申告は非常に厄介なものです。
課税売上が5千万円以下の事業者については見做しの仕入れ率で仕入額を算出して消費税の申告をしても良いですよという助け舟が簡易課税制度です。
不動産業のみなし仕入れ率は40%と決められており、卸売業のみなし仕入れ率90%と比べると仕入税額が少なく納付税額は大きくなります。
簡易課税制度は消費税の実額計算を簡便にしてインボイスや証憑の提出も不要になり事業者の事務負担を少なくしています。不動産の場合はみなし仕入れ率が40%と低いのでインボイス登録にするかどうかは簡易課税制度を用いなかった場合と比較計算して決めたら如何でしょうか?
【簡易課税の計算例】
➀売上税額 * みなし仕入れ率 = 仕入れ額
1000円 x 40% = 400円
②売上税額 - 仕入額 = 納付税額
1000円 - 400円 = 600円
発行業者の登録は既に始まっており、来年の3月末に締め切られます。セミナー参加者様からも質問がございましたので、登録締切りの半年前のタイミングでインボイス制度の記事を書かせて頂きました。(発刊日2022年8月)
ページ作成日 2022-10-25
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