【マルヨシ通信No.88】
台風が次々に来襲すると脱炭素化を急がなければならないと改めて思います。自動車による二酸化炭素の排出量は地球上の全排出量の約18%で発電所や工場からの排出量と比べると未だ低い比率ですが、世界主要各国はガソリンエンジンを排除し、EV(=電気自動車)にシフトする事で脱炭素化を急いでいます。
今年の６月８日欧州連合EU議会は２０３５年から新車の販売を二酸化炭素を排出しないゼロエミッション車に限定する法案を可決しました。
欧米主要国はカフェ規制と言う二酸化炭素排出量が一定の基準を超えたメーカーに罰金を科す制度を設けました。
こうした動きを背景に世界の自動車業界は一気にEV化に突き進むのかと思われていましたが、脱炭素社会の実現はEV一辺倒で良いのかと言う疑問も出て参りました
日本では２０２０年暮れに大豪雪があり、関越自動車道で１８００台が立ち往生してしまった事がありました。 この様な状況になるとEV車は燃料の補給が簡単に出来ず、凍死の危険性さえ起こるのではないかという煽情的な報道もあったことを覚えている読者もいらっしゃると思います。
この様な状況の中で現在注目されているのが合成燃料 (=e-Fuel)です。合成燃料は水素(H₂)と二酸化炭素（CO₂）を合成させた石油と同じ様な液体燃料であり、その技術や製造方法は昔からありました。メリットは何と言っても原料が水なので枯渇する事はありません。
デメリットとしては水素の製造単価が高くガソリン並みに普及するまでには時間がかかるという点です。
然しながら、トヨタ、日産、ホンダ、出光興産、ENEOS、東芝、全日空のほかドイツのアウディやフォルクスワーゲン、フランスの石油会社TOTALも合成燃料の開発に力を注ぐ意向を表明おり、1970年代の半導体創成期のような賑わいがあります。
合成燃料は何よりも二酸化炭素を排出しないだけでなく、現在のガソリンと同じ様に使えるので５５０万人の日本の自動車産業の雇用を守るだけでなく工場設備、輸送・貯蔵施設、ガソリンスタンド等の既存インフラをそのまま使う事が出来ます。
EV車は航続可能距離が短い割に充電に時間もかかるので遠出をする際や先述の豪雪渋滞や災害時の対応能力に不安があります。また、大きな出力を必要とするバス、トラック、船舶、飛行機などは電気よりも合成燃料の方が必要なパワーを得やすい特徴があると言われています。
実証実験の結果、合成燃料は使える事は証明されていますが、水素を如何に廉価で大量生産出来るかがポイントになっています。
また、水を電気分解して水素を作る段階で化石燃料を使っては意味ないので風力・水力・太陽光発電などの再生可能エネルギーを使ってグリーン水素を作らなければならないという課題があります。加えて400℃以上の高温に耐えうる触媒の開発も喫緊の課題です。
2035年のゼロエミッション規制に間に合う様に多くの企業が開発競争を繰り広げているので期待しましょう。 粗算では今、国内で合成燃料を生産すると税金なしの工場渡しの卸価格でリッター当たり約700円になり採算に合いません。 海外から水素を輸入する事も含め現実的な価格に少し近づけようとしています。
ページ作成日 2022-12-03
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