【マルヨシ通信No.95】
去る４月16日当社研修室にて「賢い贈与のススメ」というセミナーを開催致しました。今年は贈与税の大幅な改正がございましたので盛沢山な内容でしたが、改めまして我々が一番お伝えしたかった「賢い贈与」の肝になる部分を再度本誌で説明させて頂きます。
上記の相続と贈与の税率階段をご覧下さい。例えば１０００万円超の財産を自分の子に渡すと仮定します。相続税率を適用すると15%ですが贈与税率は40%と高税率になります。最高税率はいずれも55%ですが、相続税の場合は６億円超で達するものの、贈与税の場合は４，５００万円で早々と55%に達してしまいます。ここで読者の皆様に質問です。「この税率階段の傾斜具合を見る限り、財産を子や孫に譲る方法として、税率の低い相続税率だけを適用した方が良いのでしょうか？」
お答えを頂く前にヒントがございます。「相続税率は超過累進性が非常に高い」と言う事です。超過累進性と言うのは金額が高くなるほど税率も高くなるという事です。答えを言います。「超過累進を避ける為、税率の高い部分だけを切り離して、相続ではなく贈与にした方が節税に繋がります」。一例を用意しましたので、下図を使って順を追って説明致します。
【設定条件】
➀ 父→子4人（全員18歳以上）への相続
父の配偶者は既に死去
② 相続財産 3.2億円 ③法定割合で1/4均等分割
計算式は下にお示ししましたが、結論を先に申しますと、３.２億円は３億円を相続で、２千万円を贈与で切り離して父から子に譲る方法が一番良いです。（計算式➀）
３.２億円を全額相続で譲ると相続税は４人分５、１８０万円かかります。３億円と２千万円を切り離して相続と贈与の合体で譲った場合の税金の４人分の合計額は４,７７４万円となりその差は４０６万円です。結構な金額差が出ます。
相続税率の方が低率なのに何故、全額相続を適用すると４０６万円も高くなってしまうのでしょうか？ 前述したように相続税率が超過累進制度を取っているからです。引用した例で言えば全額相続の場合の税率は30%(控除７００万円)です。
一方、切り離しの場合の２,０００万円部分の贈与税率は15%(控除10万円)と贈与税であっても金額が小さいので低率になります。ここが今回の講座で一番お伝えしたかった点です。その他、贈与については持ち戻しルールはありますが年間１１０万円までの非課税枠が設けられています。
【計算式】*注）b. 2千万円の贈与につき7年の持ち戻しは考慮せず
①3億円は相続、2千万円は贈与で親から子に譲渡
a.[3億－5400万÷4人x 30％―700万]x4人 = 4,580万
b.[(2,000万÷4人－110万)ｘ15%－10万]x4人 = 194万
c. 納税額 ＝ a+b = 4,774万
② 3.2億円を相続だけで親から子に譲渡
(32,000-5,400)÷4人 = 6,650万
（6,650万x 30%―700万）x 4人 = 5,180万
③ 分離によって得られる節税効果=②―① = 406万円
ページ作成日 2023-06-09
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