3.何故？何故？何故？の3連発

①病床数世界一なのに何故ひっ迫？

日本は1000人当たり病院数・病床数世界一位なのに、コロナになったら途端に病床数がひっ迫していると聞き、国民誰もが唖然としました。日本の医療施設が充実していると言われる数値データを3つ並べます。病床数は160万床で人口千人当たり12・8床、病院数は8,442、人口100万人当たりのCTスキャナー台数114台でいずれも日本が断トツの世界一位です。

日本の病院の官民別病床数を表したものですが、民間の病院数が全体の8割を示し、その民間病院の93%は病床数199床以下の小規模病院と言う事です。どういう事かと言いますと一つの病院に少人数の医師しかいない、いわゆる街の開業医が多いという事です。 コロナ感染のような事態では一つの病院で対応できる医師が少なくとも5-10人居て、シフト制を組んで365日、24時間対応出来る「強い病院」の体制が求められました。街医者病院は平時には近所にあるアクセスの良さや気軽さで勝りましたが、皆さん独立経営ですから夜間や休日の対応は困難で連携は取れません。

他方、病院経営の点では患者を呼び込む為に無理をして使用頻度の高くない高額な先進医療機器を購入しなければならないなどの負担を強いられることになります。その結果、人口100万人あたり114台と断トツに多いCTスキャナーの台数です。病院側は必死に稼がねばならず世界的にも図抜けている平均入院日数（左記グラフご参照）、診察回数、投薬量などのデータに表れています。

日本の医療業界の問題点が一連のコロナ感染対策で炙り出された印象があります。病院数や病床数が多くても救急車たらい回しで亡くなる患者さんもおられ、何かが空回りしています。国民が健康保険や税金から払っている医療費の合計は国家財政の半分を占める40兆円を超えています。コロナが不均衡や無理、無駄が多い世界だと教えてくれました。私たちの健康や生命を守って頂いているので深い敬意を払いつつも、医療業界には早期の改善が望まれています。

③半導体とは何か、何故不足なの？

半世紀前、鉄が産業のコメと言われておりました。現代では半導体が産業のコメ以上に貴重な社会インフラと言われています。左のグラフにある様に世界の半導体市場は2020年は50兆円でしたが、10年後の2030年には倍の100兆円になると予測されています。この予想は経済産業省の「半導体デジタル産業戦略検討会議」で示されたものですがこの予測の根拠は後述します。

その前に半導体とは何かを説明させて頂きます。半導体とは半導体集積回路の略です。小学生の頃、鉄や銅などは電気を通す「導体」でゴムやガラスは電気を通さない「絶縁体」と学びました。少々ややこしいですが、半導体の素材は導体と絶縁体の中間の性質を持ったシリコン、ゲルマニュウムという物質です。シリコンやゲルマニュウムは通常電気を通しませんが、温めたり、光を当てたり、不純物を加えると電気を通すように変化します。 この原理を利用して電子回路を構成する数十億個の電子部品を配したモノが半導体です。代表的な電子部品としては電気の流れを制御するダイオード、小さな電気信号を大きな電気信号に変換したり、オン・オフの切り替えを行うトランジスタなどがあります。これ以外にも記憶装置、演算装置、発光ダイオード等色々な電子部品が開発され半導体が使われています。製造においては、フォトリソグラフィという光学技術を利用することにより、 微細な素子や配線を一つずつ組み立てることなく大量に生産出来るようになったことが半導体があっという間に世の中に広がった大きな理由です。

本題に戻って半導体の不足している理由ですが、主だった理由は次の通りです

• (1)半導体メーカーはコロナの影響で経済が停滞すると予想し、積極的な設備投資はしていなかった。
• (2)巣ごもり需要でパソコン、スマホ、家電の需要は急増し、昨年９月頃からは自動車産業も急回復して来ました
• (3)ほとんどの半導体メーカーはパソコンやスマホなどの民生用電子機器に注力していた為、手当てが遅れた自動車産業が一番打撃を受け多くの自動車会社が減産を経験した
• (4)世界中の自動車に搭載されているチップの1/3を供給しているルネサスや旭化成エレクトロニクスの工場が火災で大きな被害。テキサスで大寒波、台湾で深刻な干ばつが発生

以上は短期的な視点で理由を述べましたが、これらの問題の解決だけなら年内には目途が付くだろうと言われています。然しながら、中長期的にはIoT、AI、5G、自動運転、FA(工場自動化)、ビッグデータの活用によるデジタル社会への移行が世界中でドンドン進んでおり、半導体需要が爆発的に高まっています。 この需要に応える為に世界の3大チップメーカー（台湾・TSMC、韓国サムスン、米インテル）は3社総額で17兆円超の大規模設備計画を夫々発表しました。TSMCは1兆円近い投資をして熊本に初の日本工場を造ります。チップメーカーと言うのは集積回路の基盤を作る会社で、40年前は日本が世界市場の半分を握っていました。製造装置や素材製造は日本のメーカーが強いので頑張って欲しいものです。

①露は何故ウクライナに侵攻したの？

政治的に見れば、ロシアがウクライナ侵攻を試みるのは、ウクライナの欧米化を防ぐ為である事は明白です。1949年東西冷戦下のヨーロッパでソ連の軍事的脅威に対抗する為に米、英、仏、独を中心とした12ヶ国でNATO(北大西洋条約機構)が結成されました。 1991年ソ連の崩壊が起こり、その後ポーランド、ハンガリー更にはエストニアなどバルト3国やルーマニア、ブルガリア等が次々と加盟するようになり現在は30ヶ国が加盟しております。これらの国々はEU(欧州連合27ヶ国)への加盟も果たしています。ロシアにとっては、ウクライナを失うと、東欧における影響力を大きく削がれ、欧州との力学バランスが崩れてしまうという懸念があります。プーチン大統領としてはウクライナが欧米化すれば自身の政権基盤が揺らいでしまうリスクもあります。

経済面に目を転じます。ロシアはアメリカや中国と肩を並べる超大国だと思われがちですが、ロシアの2021年における名目GDPは173兆円と、米国の14分の1、中国の10分の1、日本の3分の1しかなく、GDPを比較するとロシアは小国でしかありません。人口も1.5億人です。然し、ロシアは米国、サウジアラビアに次ぐ世界3番目の石油産出国であり、天然ガスについては世界第2位の産出量を誇っています。 ヨーロッパは消費する天然ガスの40%、石油の25%はロシアから輸入しています。ドイツに至っては自国消費の天然ガスの60%をロシアに依存しています。因みに日本は天然ガスの8・7%をロシアから輸入しております。エネルギー関連が自国の歳入の半分にもなっている事はロシアの弱点でもあります。一方、エネルギー利権を握っている事によりヨーロッパ各国の喉元に短剣を突き付けておくことが出来る事がロシアにとって大きな強みです。 もう一つロシアの大きな強みは世界第3位の小麦の生産国になっており、欧州の穀倉と呼ばれています。

ロシアとウクライナの２ヶ国で世界の小麦市場の２５％を占めているので、胃袋も握られているという事です。欧米はロシアに対し口座の凍結や外貨決済の停止など厳しい経済制裁を加える事を発表しております。結果として脆弱なロシア経済は大打撃を受け大きな打撃を受ける事になりますが、エネルギーと食料という貴重なカードを握られている手前、欧州各国は強い制裁のカードは切れません。ロシアは地政学的に黒海に面した南側に不凍港(オデッサ)が絶対欲しいので、ウクライナを自国陣営から手離したくありません。

この紛争の日本への影響は直近には天然ガスや原油や小麦などの値上がりがあります。一方、長期的には米国が世界の警察官を下りた為、超大国の武力による制圧は黙認され、エスカレートして行く心配があります。台湾や尖閣諸島に影響がない事を願うばかりです。

4.舐めたらアカン。賃料査定の重要性

不動産業界って、まだまだアナログな世界です。賃料査定も、今までの「経験」や「勘」で行われたりします。但し、これって非常に怖い状況ではないでしょうか？ 根拠もなく、自分の大切な財産に価値を決められていたとしたら、如何でしょうか？

最近、ご相談があったお客様のお話をさせていただきます。ある不動産会社の人に、幾らぐらいで貸し出しが出来るのか相談しました。その担当者は「これだったら家賃7.5万円はいけますよ！」と言われたので、期待してその会社に頼んでみたそうです。結果はどうなったでしょうか？ 全然決まらなかったそうです。 1か月以上経っても連絡が来ないので心配で不動産会社に電話をしてみたら「問い合せが全然なくて、案内も1件しか入っていないんですよ」なんて言われてしまったそうです。挙句、「ちょっと値下げしてみましょう」と言われて「本当に決まるの？」と不安が募ったそうです。皆様もこの様な経験があるのではないでしょうか？ 最近ですと「AIが家賃査定します」というコンピュータを駆使したものもあります。私も使ってみましたが、正直な所いまいち精度にかけます。理由は、無機質に抽出すると物件データが一杯出てきてしまって、結局全体の平均化した結果しか出ないからです。

即ち、お部屋探しをする人が選択する基準になっておらず、賃料査定が当てにならない為、満足した結果を得られないという事になりました。手前味噌の様な話になって恐縮ですが、通常当社では賃料査定や賃料決定はオーナー様とご相談しながら綿密に行います。地域の情報や物件の情報の開示については左記の３点が重要だと思っています。

• ライバル物件の賃料帯や整備の比
• その地域の平均世帯収入
• 人口数やその伸び率

この3つの資料を基に私は「以上のデータから相場は6.5万円前後です」と、今の賃料が高過ぎる事を伝えました。結果的には条件変更後、直ぐに問い合せが増え２週間で成約に至りました。賃料を値下げした結果、成約になったというのは仲介会社としては複雑な心境ですが、ご相談頂いたオーナー様からは「有難うございます！」と感謝のお言葉を頂きました。

最初にオーナー様が尋ねた不動産会社と、私の提案では何が違っていたのでしょうか？ 違いは、オーナー様が検討する為の必要な情報を全て開示して、一緒に考えていった事が納得感に繋がったのではないでしょうか。何も情報を開示せず、「決まらないから下げましょう」では思い付きの経営です。一体幾らまで下げれば良いのか根拠も先行きも分からず不安です。次回は「私がオーナー様に開示した3つの情報」について解説させて頂きます。

5.今、注目の生前対策「家族信託」

「家族信託」は当社の相続セミナー6シリーズの中でも人気の講座です。左記のグラフにもある様に信託件数も7年間で3.5倍超に伸びており需要が高まっています。下段の認知症の増加数と無縁ではないでしょう。家族信託について押さえておくべきポイントが２つありますのでご紹介させて頂きます。

認知症と診断されても諦めないで

認知症により判断能力が低下してくると「時間」「場所」「人」の順で分からなくなると言われています。今日が何年何月何日という事が分からなくても、自宅に居て娘のAさんと話している事は理解しています。 家族信託を例に挙げますと「自分はどんな財産を持っているか」「その財産の管理を誰に任せるか」「その財産をどうして欲しいのか」（例：自宅が空き家になったら売って介護費用に充てる等）といった、家族信託の本質的・中核的な部分についてきちんと理解・納得できているか、ということが最も重要と言えます。

まだら認知症という言葉もある様に睡眠を十分にとって食欲もあり気分が爽快な時は的確な判断を下せることもあります。当社ではその分野に精通した法律の専門家と連携を取って家族信託契約をまとめた実績もありますので、宜しければお声がけ下さい。

生前贈与と家族信託

家族信託を検討する時に必ず引き合いに出されるのが「生前贈与」です。上段左の一覧表に家族信託と生前贈与の比較をしてみました。贈与税、不動産取得税が非課税で登録免許税が生前贈与の時の2%に比べ０・４%となりますので家族信託はお得感があると感じてしまいます。ここでポイントになるのは税務署が課税して来る対象はあくまでも「受益者」という事です。受益者と言うのは家賃収入や売却益を受け取る人です。

ちょっとややこしい話ですが、形式的には受託者に所有権が移転しますが、実質的には受益者が所有権を有しています。受託者である子は委託者である老父より財産の処分権・管理権を与えられたにすぎません。税務署がターゲットとしているのはあくまでも受益者（=老父）です。固定資産税だけは受託者が登記簿上の所有者なので受託者に請求が来ます。 老父没後に受託者であった子が受益権を相続すれば子が新たな受益者になり、課税対象者は子に移ります。子が受益権を他人に売れば、その売却益に対して譲渡所得税・住民税がかかり子は税務申告をする必要があります。信託が終了した際に、受託者から相続以外の方法で不動産を引き継いだ人には不動産取得税がかかります。

家族信託のセミナーは6月19日に開催予定です